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世界を熱狂の渦に巻き込んだQueenを描く「ボヘミアン・ラプソディ」のあらすじ、登場人物、メッセージを私文大学生が徹底考察

『ボヘミアン・ラプソディ』は、80〜90年代を代表するバンド「Queen」フレディ・マーキュリーに焦点を当てた映画だ。Queenの「We Are the Champions」や「Radio Ga Ga」は時代や国境を超えて今もなお多くの人々に愛され続けており、耳にしたことがある人も多いだろう。それらの楽曲と同じくらいフレディの生き様も鮮烈で、エイズを患いながらも作曲活動を続けた彼の姿は多くの人の記憶に刻まれている。今回は2019年アカデミー賞で最多4部門を獲得したこの作品のあらすじ、見どころ、考察を深掘りしていく。

目次

あらすじ

 

 フレディ・マーキュリーはもともと空港で荷物係として働いていたがクラブで偶然出会ったバンドに惹かれ運命的にボーカルの座を掴み取る。「Queen」としてバンド活動を始め、次第にアルバム、ラジオ、ツアー、テレビと活動の幅を広げながら世界中を熱狂の渦に巻き込んでいく。しかし成功の裏でバンドメンバーの間に軋轢が生まれ、フレディと仲間たちの関係は次第に険悪になっていく。そんな中彼はついにソロ契約にサインしてしまうが……。

登場人物

 フレディ・マーキュリー  

 本作の主人公であり、Queenのボーカル兼ピアノを務める。インド系の血を引き、18歳でイングランドへ移住。
 広い声域を持つ唯一無二の歌声で、世界中を魅了する。

 メアリー・オースティン 

 フレディのデビュー前からの恋人であり、彼の人生においてとても大切な存在。成功後も彼を支え続けた。

 ブライアン・メイ

 Queenのギタリスト。天文学を学んだ頭脳派でありながら、圧倒的なセンスでバンドの音楽を支える。

 ジョン・ディーコン

 Queenのベーシスト。控えめな性格で、フレディには「何も出てこない」とネタにされる。

 

 ポール・プレンター 

 もともとはバンドスタッフだったが、フレディの推薦でマネージャーに。

見どころ

 

本作最大の見どころは間違いなくラストのライブシーンだ。数々の問題を乗り越えたQueenが再び一つになり21分のメドレーを披露する。そのクライマックス、「We Are the Champions」の演奏後にフレディが「お別れだ。愛してる。」と言い放ち腕を振り下ろす。これまでのあらすじを踏まえると自分を支え続けてきた家族を含め観客に対して自分にだけわかるように別れの挨拶を告げているようで切なさすら覚える。このシーンはまさに映画のキャッチコピー「魂に響くラスト21分——その感動に涙が止まらない」に違わぬ圧巻の出来栄えである。もしまだ観ていないなら見ることをおすすめする。

ボヘミアンラプソディのテーマとは?

「ボヘミアン・ラプソディ」にはメンバー同士の熱い友情、恋人との強固な絆、さらにはバンドと業界との激しい衝突まで、数々の人間関係が描かれている。また孤高の天才の苦悩他者と異なることへの葛藤、そしてそれを乗り越える覚悟など多くのテーマが込められた作品でもあろう。しかし特に私は「周りを見渡すことの大切さ」を訴えていると感じた。これは単に「自己中心的な生き方を戒める」という話ではない。他人と違うことに怯えず、自分自身に誇りを持ち、自らを成長させる環境を選び取ることの重要性を示しているのだ。

 まず前提としてこの映画ではフレディ・マーキュリーの異質さが随所に強調されている。これは彼の実際の人生に基づいたものだが、映画的な演出も加わりその“奇想天外さ”がより鮮烈に際立たせている。例えば

・最初にティムの代わりにバンドに入った際、ステージで挨拶をすると「ティムは?そのパキやろうは?」と聴衆に罵られる。

・晴れ着で選んだ個性あるファッションを「トカゲみたい」「空を飛べそう」といじられる。(実際に真っ白な奇抜なデザインの衣装を着ていた。)

・「キラー・クイーン」を超える曲を求められた際、誰もが驚く「オペラ」を取り入れると提案。(マネージャーには「今時オペラなんて誰も聴かない」と否定される。)

 

 このようにフレディの常識破りな発想が終始描かれ、その異端性が強調されている。そして本人もそれを理解しており、バンド名「Queen」の意味を聞かれた際には 「規格外だろ?俺は誰よりも規格外だからね」 と自身も納得している様子を見せる。

 しかしそんなフレディも孤独に苛まれる瞬間が訪れる。彼は自身のセクシュアリティに苦悩し、恋人メアリーとの関係も揺らぎ、さらには家族を持つ他のメンバーとの違いに悩み始める。その焦燥感からフレディは酒とドラッグに溺れ、次第に自分を見失っていく。

 ここで重要なのはこの時にフレディを取り巻く二人の人物——ポール・プレンターメアリー・オースティンのどちらを彼が信じるか、と言うことだ。

メアリー・オースティン

 フレディの元恋人。フレディがバイセクシュアルであると告白した時、フレディはゲイであることを伝え、彼女自身辛いもののフレディのせいではないことも伝える。しかしフレディにずっといるように頼まれるも拒否し、フレディとずっとつけておくことを約束した指輪も外してしまう。フレディが荒み始めた時にはフレディとはもう別れており、新しくできた彼氏の子を妊娠している。妊娠したことをフレディに報告した際にはフレディに「なんてこと、、?」と言われ不快感を露わにする。

ポール・プレンター

 フレディの親友。実際にはマネージャーという立ち位置だがポール自身がゲイであり、その共通点もあることからフレディからは絶大な信頼を寄せられている。フレディのソロデビューを主導した人物でもあり、彼のソロデビューを一番近くで見続ける。

 このようにフレディが荒んでいた時期のそれぞれの対応は全く異なり、フレディからしてみればメアリー過去の恋人で自分との約束を守らなかった人とも言える。またポールとは共通点を持ち、いつもフレディを身近に見続けてきた存在であるから彼にとって大切な存在で合ったことは間違いないだろう。

 結論から言うと、フレディはメアリーの「ここの人たちはあなたを気にかけていない。ポールは気にかけていない。」という言葉に目を覚まし、ポールとの決別を選んだ。これは彼にとって容易な決断ではなかったはずだ。というのもポールは彼が孤独だった時期に最も近くにいた存在であり、甘い誘惑のように彼を縛りつけていたからだ。しかしフレディはメアリーの言葉を信じ、「本当に自分を見てくれているのは誰なのか」を見極めた。

 その結果、ポールはフレディの仕事を奪い、電話を独占することで彼を意図的に孤立させていたことが露呈する。もちろんポールからしたらフレディのことが好きすぎて独占欲に駆り立てられていたとも考えられるのだが。

 この後、フレディはバンドのメンバーとよりを戻し、結果としてライブ・エイドに出演し大成功を収めた。

 この映画が示しているのは、「居心地の良さ」が必ずしも「自分にとって最良の環境」とは限らないということだ。フレディにとって、バンドを離れた環境は“自由”のように見えたが、結局そこには真の仲間はいなかった。むしろ、彼を支えていたのは時に厳しい言葉を投げかけながらも、本当に彼の才能を信じていた人々だった。

 だからこそ、この映画は俺たちにこう問いかけているように思える。

「お前が今いる環境は、お前を成長させているか?」

 心地よい関係に浸り、都合のいい言葉ばかり聞いていても、それは前進ではない。フレディ・マーキュリーのように、自らの道を切り開き、挑戦し、時には環境を変える勇気を持つことが本当の強さであるとこの映画は教えてくれているのではないだろうか。

まとめ

 今回は「ボヘミアン・ラプソディ」のあらすじ・人物・考察について深掘りした。この映画は自分とは何者かを見失った時一歩踏み出す勇気が出ない時にそっと背中を押してくれるだろう。45歳と言う若さでこの世を去った圧倒的カリスマの激動の人生をぜひ見てほしい。

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